矯正治療に使うワイヤーの種類と特徴

ユアサ矯正歯科院長の湯浅です。

ワイヤー矯正はエッジワイズ法が主流で、ブラケットの四角い溝に四角い断面のワイヤーを通すことで個々の歯を個別にコントロールし3次元的な歯の移動する方法です。これにより緊密な咬合関係を獲得することが可能となります。その中でも、矯正用ワイヤー(アーチワイヤー)は、矯正装置の中でも重要なパーツのひとつです。ワイヤーが歯を動かし、理想的な位置へと導いてくれる役割を果たします。今回は、矯正用ワイヤーの種類とその特徴について解説します。

1. ニッケルチタンワイヤー

治療初期段階で特によく使われます。弾性が強く、形状記憶特性があります。このワイヤーは、弱い力で長期間にわたり歯を動かすことが可能です。

 メリット

 ・柔軟性があり、矯正力を弱くできるため、痛み程度を比較的弱くできる可能性がある。

 ・一定期間、同じワイヤーが使用できるため、来院の頻度を減らすことができる。

 ・形状記憶特性により、持続的な歯の移動が可能。

      ニッケルチタンワイヤーは柔軟性があるため凸凹がある部位にも結紮できる

 デメリット

 ・柔らかいため治療の最終段階にはあまり適していない(歯が安定しない)。

 ・金属アレルギーを持つ人には注意が必要(ニッケル)。

2. ステンレススチールワイヤー

ステンレススチールワイヤーは、耐久性が高く、歯を動かす力が強いため、矯正の中期から後期の治療で使用されることが多いです。このワイヤーは硬いので、歯をしっかりとした力で動かしたり固定することが可能です。

 メリット

 ・強い力で歯を動かせる。

 ・剛性があり、ワイヤーの歪みを減らすことができる(しっかり歯を移動させられる。)

 ・コストパフォーマンスが高い。

 ・ワイヤーの屈曲調整ができる。

 デメリット

 ・柔軟性が低いため、装着時に痛みを感じることがある。

 ・弾力が少ないため、歯が移動し終わると調整が必要になる。

3. コバルトクロムワイヤー

コバルトクロムワイヤーは、ステンレススチールワイヤーに比べて易屈曲性がありながら、強度が高い特徴を持っています。このワイヤーは、剛性と柔軟性のバランスが良く、さまざまな治療段階で使用されます。

 メリット

 ・操作性が良く、強度が高い。

 ・熱処理により剛性を上げることができる

 デメリット

 ・ステンレススチールワイヤーに比べてやや高価。

 ・特定の力加減が必要な場合には、他のワイヤーの方が適していることもある。

4. ベータチタンワイヤー

ベータチタンワイヤーは、チタン合金を使用しており、柔軟性と強度のバランスが優れています。このワイヤーは、弾力性が高いため、歯に対して一定の力を持続的に加えながら動かすことができるため、治療の様々な段階で使用されます。

 メリット

 ・柔軟性があるが、屈曲が可能。

 ・低アレルギー性で、金属アレルギーのリスクが少ない。

 ・弾力性があり、強度と柔軟性のバランスが良い。

 デメリット

 ・ステンレススチールやコバルトクロムに比べて高価。

 ・調整が難しいため技術が必要。

まとめ

矯正用ワイヤーにはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴やメリット・デメリットがあります。治療の段階に合わせて最適なワイヤーが選ばれます。どのワイヤーを選ぶかは、歯科医師の判断によって異なりますので、治療を受ける際は自分の状況や希望をしっかりと伝えることも大切です。