人間の健康の維持、回復、促進するための医療行為によって得られる恩恵は大きいですが、反面どんな医療にもリスクは伴います。進歩する医療の分野でも解消できないものは多くあります。矯正治療にも、治療を行う事によるリスク・副作用が存在します。患者さんには矯正治療中に起こりうる内容に関して、正しく理解しておいて頂くことは、とても大切なことだと考えています。是非ご一読ください。
矯正治療中
矯正装置を装着した直後やワイヤーを交換した直後に痛みや不快感などを感じることがありますが、個人差はありますが、通常数日で治まります。歯が動くことによる痛みが伴いますので強い場合には痛み止めのお薬を飲んでいただきます。また、装置を装着して間もない時期には口内炎ができることもあります。お口の中の粘膜を保護するワックスなどで対応しております。
ブラッケットとワイヤーによる矯正治療は、歯の表面に器具を装着するため装置の種類にもよりますが見た目にも矯正をしていることがわかることがあります。
装置の装着中は発音しづらいことがあります。
装置の使用状況や来院状況などの患者さまの協力度、顎の発育変化や顎位の変化、歯の動きの個人差などにより治療期間が長引いたり、治療方針を変更する場合があります。
舌で歯を押す癖や、歯並びに悪影響をあたえる癖が改善されない方は、治療期間の延長やご希望の治療結果が得られない場合があります。
患者さんが、取り外しできる矯正装置や補助装置の装着時間を守っていなかったり、定期的な来院ができなかった場合は、治療期間の延長やご希望の治療結果が得られない場合があります。
矯正治療中、歯を動かしている間に知覚過敏様の症状が現れることがあります。
矯正力を加えられた歯の根の先が溶けて短くなる「歯根吸収」という現象が起こることがあります。矯正治療に伴う歯根吸収のリスクについて程度の差はありますが、可能性があることをあらかじめご了承ください。ただし治療後も歯根が短くなり続ける事はなく、通常は治療後に吸収は止まります。歯根が短くなっても、その後の口腔ケアを怠り、歯周病になって歯を支える 歯槽骨を失うという事などがない限り、「歯の寿命」に影響はありません。
矯正治療中に「歯肉退縮」を起こすことがあります。これは、歯ぐきが下がり、歯が長く見えたり、歯と歯の間にすき間(ブラックトライアングル)が生じたように見えることがあります。
特に下の前歯や、凸凹が強かった箇所などで認められることが多い症状です。これは、加齢や不適切なブラッシング、歯ぎしりなどが原因で生じることもある現象で、歯の健康や寿命に大きな 影響を与えるものではありません。
発現率はとても低く稀ですが、矯正治療中に歯の神経が死んでしまう「歯髄壊死」を起こす可能性があります。原因などは明確ではありませんが著しく歯列から逸脱した歯や複数回治療した歯を動かすことによって生じる事が稀にあります。歯髄壊死によって歯ぐきが腫れるなどの症状が出た場合は根管(歯の神経)治療が必要になります。
ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
矯正装置を装着する時や撤去する際に補綴物(差し歯や被せもの)に傷がつくことがあります。また歯の形を修正したり咬み合わせの微調整を行ったりする可能性がありますのでご了承ください。
装置を歯から外す際に歯の表面に傷がつくことがありますが、これは一般的に再石灰化(エナメル質の再生)が可能な範囲です。歯質の弱い方は稀に歯が少し欠けてしまう場合もあります。
この場合には一般の歯科医院にて歯の表面の処置を行って頂くことがありますのでご了承下さい。
装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
矯正装置を誤飲する可能性があります。
矯正治療と顎関節症の確かな因果関係はないとされています。顎関節症は歯並びを治したら確実に良くなるとは言えません。また治療中や治療後に顎関節症を発症したり症状が悪化すること もあることをご理解ください。
矯正装置に使用されている金属に対する「金属アレルギー」がある場合は、治療に制限が出る場合があります。
多少、食べ物の制限や食べ方を注意して頂くことがあります。
装置が壊れたり、外れてしまうこともあります。その際は、連絡のうえ受診するようお願い致します。
患者さんのなかには、治療中にかなりのストレスを受ける方もおり、頭痛、首や肩のこり、不眠など不定愁訴が起こる場合があります。
顎変形症の手術後に口唇などに痺れが出る場合がありますが、通常徐々に回復します。手術前後に生じるリスクや副作用に関しては口腔外科医に説明を受けてください。
治療中の虫歯予防とブラッシングについて
治療中、装置の周りなど歯磨きしにくい部分ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。間食を控え、矯正治療中に合ったブラッシング指導を受けて毎日丁寧なブラッシングを心がけ、歯を清潔にしてリスクを抑えましょう。
歯の汚れは、歯の動きや治療期間にも大きな影響を及ぼします。
治療は、口腔内の管理ができることを前提に始めていきます。当院では歯ブラシ指導、歯のクリーニング、定期的なフッ素塗布を行い注意喚起しております。万が一、治療中に虫歯や歯周病になっても責任は負いかねますのでご了承ください。基本的にお口の中の管理は患者様ご自身、お子様の場合は保護者の皆様の責任のもとお願いしております。ご協力の程よろしくお願い致します。また、歯が動くと隠れていた虫歯が見えるようになることもあります。
口腔内の清掃状態があまりにも不良な場合は、途中で治療を中断あるいは中止することもあります。
治療終了後の保定中
矯正治療で歯を動かして歯並びを整える「動的治療」を終えて歯並びが改善されても、まだ歯が元の状態に戻ろうとする性質があるため、一定期間動かした歯をとどめておく保定が必要です。
歯の位置が安定するまでの保定期間には個人差があるので、治療後も歯科医師の指示を守ってください。
顎の発育、舌や口唇の誤った癖、口呼吸、顎位の変化、歯ぎしりなどにより咬み合わせが変化することがあります。
治療後は後戻りを防ぐため保定装置を使用して頂きます。当院では保定装置の使用を約束して頂いく前提で最終的に固定装置を外していきます。
保定装置の使用状況が良くないと歯並びが後戻りして再治療が必要となることもあります。再度固定式の装置を装着していただくだけでなく、治療費用も余計にかかってしまいます。治療後も歯科医師の指示にしたがって保定装置を使用してください。
治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
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