院長コラム

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矯正用インプラント(アンカースクリュー)

矯正治療において歯を移動させる際に考えなくてはいけないことの一つに、移動のためのメカニクスがあります。

治療計画に基づき、治療ゴールに向けて歯を移動させる際に、移動させたい歯と移動させたくない歯があります。

例えば前歯の突出量が多く、前歯をたくさん後方へ移動させたい場合には抜歯をともなった治療になることがあります。この際に抜歯スペースをどう利用できるかによって治療後の結果が変わってきます。抜歯スペースが前歯の後方移動で埋まるのか、それとも奥歯の前方移動により埋まるのか。従来の方法では、抜歯スペースを挟んで、前歯(移動させたい歯)と奥歯(移動させたくない歯)で引っ張り合いによって抜歯スペースを埋めていました。この前歯と奥歯の引っ張り合いは、奥歯を支え(固定源)として前歯を引っ張るというふうにとらえることができます。この固定源の強さによって前歯の後退できる量が変化します。固定源を強化するために、従来は顎内固定と顎外固定といった2つの方法で対応してきました。顎内固定とはホールディングアーチ、パラタルアーチといった、移動や変化の対象となる歯や口腔内組織に固定を求める補助装置です。一方、顎外固定とはヘッドギアなど、患者さん自身に装着してもらい固定を強化するものです。

顎内固定は3次元的な歯の移動に対応ができ患者さんの協力度に依存しないという利点がありますが、固定源自体が移動や変化を起こすことがあり、個人差もあることから予知性や信頼性に大きな問題があります。顎外固定は固定を強固にできますが、患者さんの協力度に大きく左右され、力の大きさ方向のコントロールが難しいという問題点があります。

 

矯正用インプラントは、顎内固定と顎外固定の利点を併せ持っています。

 

埋入部位は比較的自由度があるため、移動の対象となる歯の近い部分に固定源を設定でき、

力の作用方向も単純化できるため、コントロールしやすくなります。

必要に応じ複数を同時に活用できるため、歯の移動においても自由度が高くなります。

矯正用インプラントを用いた矯正治療では、従来の方法と異なり、牽引力が歯の移動にほとんど影響を与えない骨に固定源を作ることができます。そのため、従来では抜歯する必要があったケースにおいても、矯正用インプラントを使用することで抜歯の可能性を減らすことが可能になりました。

矯正用インプラントを使用するには、歯の移動方法についてあらかじめ計画し、歯槽骨の適切な位置に埋入するといったことが必要にはなりますが、埋入自体は比較的容易で、埋入後の脱落などといったトラブルも現在ではかなり少なくなっています。埋入後においても、歯の移動メカニクスの単純化による治療期間の短縮や、口腔内の矯正装置を簡素化できるといった患者さんにとってのメリットも多いのではないでしょうか。