赤ちゃんや幼児期のお子さまがよくする「指しゃぶり」。安心したいとき、眠る前など、自然な行動のひとつですが、長期間続くと歯並びやかみ合わせに悪影響を与えることがあります。今回はその理由と、指しゃぶりが原因となる不正咬合(ふせいこうごう)、やめるタイミング・サポート方法についてお話します。

◆ なぜ指しゃぶり・おしゃぶりが問題になるのか?
指しゃぶりやおしゃぶりは、生まれたばかりの赤ちゃんにとって安心感を得るための自然な行動です。ですが、3歳を過ぎても習慣として続くと、指しゃぶりによる圧力が、歯やあごに繰り返しかかることで、以下のような不正咬合が起こることがあります。
◯ 開咬(かいこう)
上下の前歯がかみ合わず、すき間ができる状態です。指やおしゃぶりの先端が前歯の間に長時間入り込むことで起こりやすくなります。
→ 食べ物が前歯でかみ切りにくくなる
→ 発音がしづらくなる(さ行・た行など)
◯ 上顎前突(じょうがくぜんとつ)いわゆる「出っ歯」
指によって上の前歯が前に押し出され、出っ歯の状態になることがあります。
→ 口が閉じにくく、口呼吸のクセも出やすくなります。
◯ 上下のあごのバランスの乱れ
指を強く吸う癖が続くと、下あごが後ろに押される姿勢になるため、下あごの発育がうまくいかず、バランスが崩れることがあります。
◯ 舌の位置異常(低位舌)
指しゃぶりの影響で舌が低い位置に癖づくと、舌の正しい圧力が歯に伝わらず、歯列の拡がりや整列が妨げられることもあります。
◆ 指しゃぶりによる力のかかり方
指しゃぶりのとき、指が歯やあごに与える力は次のようなものです。
- 上あご(前歯)を前方に押す力
- 下あごを後方に押す力
- 口が開いた状態が続く(開口)
- 舌の位置が下がる習慣がつく


これらの力が毎日のように繰り返しかかることで、歯やあごの発育に影響が出てきます。
◆ やめるタイミングとサポートの仕方
指しゃぶりやおしゃぶりは、3歳ごろまでにやめるのが理想的とされています。3歳を過ぎても続いている場合は注意が必要です。習慣が長引くほど、歯並びやあごに影響が出る可能性が高くなります。それ以降も続く場合は、少しずつやめるサポートをしてあげましょう。
◯ 無理にやめさせない
急にやめさせようとすると、逆にストレスがたまってしまいます。まずは、「やめることがカッコいいこと」「お兄さん・お姉さんになるステップ」など、前向きになるような声かけを。
◯ 意識をずらす安心アイテムを
お気に入りのぬいぐるみや毛布など、お子さんが安心できる別の方法を見つけてあげましょう。
◯ ごほうび制度
指しゃぶりを我慢できた日はご褒美をあげるなどということがあると、子どももやる気を出しやすくなります。
【Q&A】指しゃぶり
Q1. 指しゃぶりってどうして歯並びに影響するの?
A. 指しゃぶりをすると、指が上の前歯を前に押し出したり、下あごを後ろに押したりする力がかかります。
この力が繰り返しかかることで、歯の位置やあごの発育に影響が出てしまうのです。
Q2. どんな不正咬合になるの?
A. 主に以下のような不正咬合が見られます。
- 開咬(かいこう):前歯がかみ合わず、すき間ができる
- 上顎前突(出っ歯):上の前歯が前に出る
- 下あごの発育不足:下あごが引っ込んだような形になる
- 舌の位置異常(低位舌):舌が低くなり、歯列に必要な舌の力がかからなくなる
Q3. 何歳くらいまでなら大丈夫?
A. 一般的には3歳ごろまでの指しゃぶりであれば、多くの場合は自然にやめられ、歯並びへの影響も少ないです。
ただし、4歳以降も続く場合や、すでにかみ合わせに異常が見られる場合は注意が必要です。
Q4. 指しゃぶりをやめたら歯並びは元に戻るの?
A. 成長過程で自然に改善することもありますが、クセが長く続いた場合や歯の傾きが大きい場合は矯正治療が必要になることもあります。
お子さんの年齢や歯・あごの状態によって判断が変わるため、一度専門医にご相談ください。
Q5. 指しゃぶりをやめさせるコツはありますか?
A.
- 焦らず、優しく声かけをする(叱らない)
- やめることが前向きになるようなな声がけを
- お気に入りのおもちゃや安心アイテムで気をそらす
- 寝る前だけ指しゃぶりする子には、手袋なども有効です
習慣をやめるには環境づくりと継続的なサポートが大切です。
Q6. 歯並びが心配になったらどうすればいい?
- 気になる点がある場合は、お子さまの成長に詳しい矯正歯科の専門医に早めに相談するのがおすすめです。
早期に対応することで、将来的な本格矯正を避けられる場合もあります。
◆ まとめ:早めの気づきと対応がカギです
指しゃぶりは、お子さまの心の安心にもつながる大切な行動ですが、続きすぎると不正咬合の原因になってしまうことがあります。やめるタイミングを見極めつつ、もし歯並びが気になるようであれば、お早めにご相談ください。
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監修者:湯浅 壽大
歯科医師・歯学博士(D.D.S., Ph.D.)
日本矯正歯科学会認定医|北海道矯正歯科学会・日本舌側矯正歯科学会 会員
2002年に北海道医療大学歯学部を卒業後、同大学大学院歯学研究科で専門性を深める。
2013年に開業して以来、矯正治療を中心に、噛み合わせや見た目の調和を重視した歯科治療を提供。
学会や勉強会に積極的に参加し、最新の矯正技術を取り入れて治療にあたっています。
詳しいプロフィールはこちらhttps://yuasa-orthodontics.com/about